私の好きな詩  http://uribou.sakura.ne.jp/majo4.gif

 

。。。。。http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gifやさしさは愛じゃない

やさしさしかなかったんだね
でもやさしさは愛じゃない
やさしさはぬるま湯
私はふやけてしまったよ

ひっぱたいてくれればよかったのに
怒り狂ってほしかったのに
殺してもよかったのに

あなたは私を誉めたたえてばかりいた
その眼鏡の奥のひんやりしたふたつの目で
男の欲望のきりのないみのりのないやさしさで

 

          谷川俊太郎

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gifあい

あい 口で言うのはかんたんだ
愛  文字で書くのもむずかしくない

あい 気持ちは誰でも知っている
愛  悲しいくらい好きになること

あい いつまでもそばにいたいこと
愛  いつまでも生きてほしいと願うこと

あい それは愛ということばじゃない
愛  それは気持ち だけでもない

あい はるかな過去を忘れないこと
愛  見えない未来を信じること

あい くりかえしくりかえし考えること
愛  いのちをかけて生きること

                谷川俊太郎

過thttp://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif

  日々を過ごす
 日々を過つ
 二つは
 一つことか
 生きることは
 そのまま過ちであるかもしれない日々
 「いかが、お過ごしですか」と
 はがきの初めに書いて
 落ちつかない気分になる
 「あなたはどんな過ちをしていますか」と
 問い合わせでもするようで
 
           
              吉野 弘

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif希望


もっとやさしくなりたい

すこしのことでおこったりしない

ひろいこころがほしい

きみが安らかに生きて行けるように

きみのことを思っていたい

きみがくるしくならないくらいに

きみを見つめていたい


小泉周二

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gifほぐす

小包の紐の結び目をほぐしながら
思ってみる
結ぶときより、ほぐすとき
少しの辛抱が要るようだと

人と人との愛欲の
日々に連ねる熱い結び目も
冷めてからあと、ほぐさねばならないとき
多くのつらい時を費やすように

紐であれ、愛欲であれ、結ぶときは
「結ぶ」とも気付かぬのではないか

ほぐすときになって、はじめて
結んだことに気付くのではないか

だから、別れる二人は、それぞれに
記憶の中の、入りくんだ縺れに手を当て
結び目のどれもが思いのほか固いのを
涙もなしに、なつかしむのではないか

互いのきづなを
あとで断つことになろうなどとは
万に一つも考えていなかった日の幸福の結び目
その確かな証拠を見つけでもしたように

小包の紐の結び目って
どうしてこうも固いんだろう、などと
呟きながらほぐした日もあったのを
寒々と、思い出したりして

吉野 弘

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif今日からはじまる

あなたに会えてよかった
空の青く
大きいことも
あなたがいて気づいた
この光もいま届いたばかり
一億五千キロのかなたから
今日からはじまる
何かいいこと

みんなに会えてよかった
すてきなものが
そばにあること
みんながいて気づいた
いまもどこかで命が生まれる
子犬も小鳥も草の芽も
今日からはじまる
何かいいこと

私に会えてよかった
胸の鼓動も
ときめきも
わたしがいて気づいた
だれも知らない音だけど
わたしの殻をやぶる音
今日からはじまる
何かいいこと

高丸もと子

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gifあなたはひかり

そのままの
あなたが好きよ
自分の弱さと
戦いながら
転んだり
傷ついたりして
不器用に生きている
あなた
がんばって
がんばって
あなたの中に
あたしをみつける
人は
みっともないから
可愛いと思う
恥をかくから
あったかいと思う

好きなものを
だいじにして
あきらめないで
捨てないで
あなたはひかり
輝く地球の
一粒のひかり

みつはしちかこ

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif名づけられた葉

ポプラの木には ポプラの葉
何千何万芽をふいて
緑の小さな 手をひろげ
いっしんに ひらひらさせても
ひとつひとつの てのひらに
のせられる名は みな同じくポプラの葉

わたしも
いちまいの 葉にすぎないけれど
あつい血の樹液をもつ
人間の歴史の幹から 分かれた小枝に
不安げにしがみついた
おさない葉っぱに すぎないけれど
わたしは 呼ばれる
わたしの名で 朝に夕に
だからわたし 考えなければならない
誰のまねでもない
葉脈の走らせ方を 刻みのいれ方を
せいいっぱい 緑をかがやかせて
うつくしく散る法を

新川和枝

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gifチッチとサリーの四季


<春>
窓をあけて扉をあけて

窓をあけて
扉をあけて
さあ出ておいで
泣いているのはあなただけじゃない
ごらん外にはたくさんの人たちが歩いている

季は春
土の中の種までが
光を求めて顔を出す季節
まして心ある人ならば
さあ
鳥になりたい
光になりたい
心のままにとんでおいで

窓をあけて
扉をあけて
黄色い花々をくぐって
いま1度あたらしい子どもになって
生まれておいで

みつはしちかこ

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gifチッチとサリーの四季

<夏>
レモンソーダを飲むたびに
私は思い出す
あの暑い夏の午後

風のテラスの
白いテーブル白い椅子

レモンソーダをあいだに
みつめあったふたり

なにもかも
眩しく揺れてる中で
ひっそりと
あなたのひとみに
わたしがいた.....

いまはひとり
あの日と同じ風のテラスで
レモンソーダをかきまわす

過ぎた時は戻らないけど
ひとり飲む
レモンソーダは
ピリピリと胸にしみて

あの暑い夏の日の午後
宝石のような
思い出の中へ
私は帰る

ひっそりと
あなたのひとみの中に.....

みつはしちかこ

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gifチッチとサリーの四季

<秋>
あなたのふるさとへ

こんなきれいな秋の日には
あなたがはじめてみた
野や山や川に
私もあってみたい気がする

あなたのふるさとへつれてって
干し草の山にねころんで
あなたはあなただけの
だいじな思い出に目を閉じて.........

私はちょつぴりかなしい気持ちで
あかく輝く柿の実をかじっていよう
こんなきれいな秋の日には

みつはしちかこ

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gifチッチとサリーの四季

<冬>
こころ

私 知っている
この 死んだような枯木が
今 戦っていることを

私 知っている
この 無言の裸木が
今 歌っていることを

私 知っている
この 冷たい幹の中が
今 燃えていることを

私 知っている
みんなくりかえし生きることを
冬のとなりに春が待つことを

みつはしちかこ

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif言葉は

言葉は
紙ヒコーキのようなものでしょう

一つの言葉に
丁寧に折り目をつけて
祈るような気持ちで飛ばしたり
ときには荒々しく
続けざまに投げつけたり

わたしのこころ
乗せただけ ひとつも
こぼれ落ちずに届くかしら
まっすぐに

杉本深由起

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gifはじまり


わたしはいつからわたしなのだろう
あなたはいつからあなたなのだろう 

わからない
わたしのはじまり
わからない
あなたのはじまり 

けれどわたしとあなた
わたしたちのはじまりは
はっきりとわかる 

わたしとあなた
わたしたちのはじまり
それは
いま

小泉周二

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif山頭火うりぼうのお気に入り           

うれしいこともかなしいことも草しげる


分け入っても分け入っても青い山


わがままきままな旅の雨にぬれてゆく


あるがまま雑草として芽をふく


ともかくも生かされてはゐる雑草の中


酔へなくなつたみじめさはこほろぎがなく


独り飲めば小雨冷やかに散る葉あり


ほろほろ酔うて木の葉ふる


おちついて死ねさうな草萌ゆる


おちついて死ねさうな草枯るる

   
やつぱり一人がよろしい雑草


やつぱり一人はさみしい枯草

山頭火

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gifうりの駄作

二人して気持ち新たに初詣で

新年に神社の外で願いかけ

パソコンが休暇願いを出しそびれ

ダイエットしてもないのにまた細る

ネットには目には見えないドラマあり

記念樹に買いもとめたり花水木

立夏過ぎこころ早くもふるさとへ

ツバメきて我が家にやっと春きたり

雨あがり心の中に初夏の風

雨あがり気持ちはればれ花博へ

それぞれに違う場所から同じ月

あき立ちていよいよ里に帰省かな

里帰りネット仲間で盛り上り

腐りかけ気づき慌てて冷凍庫

遊び顔最終電車に置いて降り

玄関に入れば主婦の顔となり 

色淡き思いでめぐるルミナリエ

うりぼう

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif熟せ メロン

東北本線の下り列車の中で
十歳くらいの少女に会った
少女は赤い毛糸のえり巻きをして
窓ぎわの席にちんまり腰かけていた
母親らしい和服のひとが
そのとなりにすわっていたが
心配ごとでもあるらしく
どこかうかない顔をしていた
「お母さん そのメロン
 明後日あたりが食べごろだって
 くだもの屋のおじさんが言っていたわね」
といきなり少女が言った
「え? そうそう そう言っていたわね」
お母さんは答えてから
「それまで病人 もつかしら
 もたないでしょうね
 お医者さまは 今夜あたりが峠だと
 おっしゃっているそうだから」
ひざの上の包みに目をおとして
あきらめたような言い方をした
身内の誰かが
きとくだという知らせをうけて
母娘はかけつけるところらしい
  
「お母さん その箱をこちらにかして」
少女はメロンのはいった箱を受け取ると
両方のてのひらで いとしむような持ち方をした
そのままじっと いつまでも持ちつづけている
「なにしているの?」
「あのね お母さん」
少女はすこしはにかみながら答えた
 「わたしの手の中で メロンを熟させるの
 このまえ お見舞いに行ったとき
 おばさん メロン食べたいっておっしゃったのよ
 東京には売っているだろうねって
 どうしても
 ひとさじでも食べさせてあげたいのよ
 明後日なんかじゃ間に合わないわ
 汽車が着くまでに 熟させるの熟せメロン
少女のあたたかなてのひらの中で
死んでゆくひとよ いましばらくお待ちなさい
私はふと
メロンのほのかな香りをかいだように思った
やさしい心が におっているのだと思った

新川和江

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif生きる


生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっとあるメロディを思い出すということ
くしゃみすること
あなたと手をつなぐこと

生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと

生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
   
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬がほえているということ
いま地球がまわっているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれるということ

いまいまが過ぎてゆくこと
   
生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ

谷川俊太郎

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif私の葉とは?

新緑の季節
刻みのある葉は その刻みを
すじのある葉は そのすじを
一枚たりともおろそかにせず
千万 億万
ぞっくりとでそろう ぞっくりと!

わたしも
新しい葉をだしたいのだけれど
さてわたしの葉とは?

道ばたの雑草ほどに自分のことが
わかっていないことにあらためて気づかされ
緑の中で
目に見えぬ自然の力に
わたしははげしく鞭うたれる

新川和江

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif樹のこころ

花の季節を 愛でられて
花を散らしたあとは
忘れられている さくら
忘れられて
静かに過ごしている樹の心を
学ばなければいけない
忘れられているときが
自分を見つめ
充実させるときであることを
樹は 知っている

高田敏子

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif自分の感受性くらい

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ

 茨木のり子

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gifすすきの原

さようなら さようなら
すすきの穂のくり返す
さようなら
ひがな一日
すすきは 風に
さようならを おくりつづけている  

ごめんなさい
私はあなたに あのような
美しいさようならを したでしょうか

あなたにも あなたにも
いつまでもああして
手をふりつづけていたでしょうか

私はうかつにも
別離がいつもあることに気づかずに
すぎてきたように思う

私のまわりから いつとはなしに
時の流れのなかに
去っていった人たちのことが思われる
すすきの原

高田敏子

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gifA氏の投稿より

諸行無常の春の花は
是生滅法の風に散り
消滅々己の秋の月は
寂滅以楽の雲に隠る

生者必滅 会者定離はこの世の習い

                http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif

踏まれた体の痛みよりも

踏んでしまった心の痛みを

わかる人間になれたら

いいですね

ひろはまかずとし

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif

うばい合えば足らぬ 

わけ合えばあまる

うばい合えば憎しみ

わけ合えば安らぎ

みつを

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gifただいるだけで

あなたがそこに ただいるだけで

その場の空気が あかるくなる

あなたがそこに ただいるだけで

みんなのこころが やすらぐ

そんなあなたに わたしもなりたい

みつを

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif朝のリレー

カムチャッカの若者が
きりんの夢を見ているときメキシコの娘は
朝もやの中でバスを待っている

ニューヨークの少女が
ほほえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は
柱頭を染める朝陽にウインクする

この地球では
いつもどこかで朝がはじまっている
ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交替で地球を守る

眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる

それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ

谷川俊太郎
http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif北風に向かって

北風に向かって 進むとき
けなげになる
冷たい空気が はだをさすと
いっせいに 皮下の細胞が引きしまる
心の深いところで
負けまいとさけぶ
ひといきに
かけるように進む

北風に向かって ペダルをふむとき
身を低くする
おしもどされまいと
ひざの屈伸をきかす
からだのしんから
エネルギーが燃えてくる
車と一つになって
わずかに進む

北風に向かって 進むとき
けなげになる

川端律子

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gifぼくはひとり   

いいじゃないか
はぐれ者で
自由な心でいたいからさ

いいじゃないか
はぐれ者で
いっとき
だれかに
わすれられたってさ

いいじゃないか
ぼくひとりで
まっ青な空が
目にしみる

いいじゃないか
ぼくひとり
ぼくは ぼくを
さがすんだ

江口あけみ

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif水のこころ 

水は つかめません
水は すくうのです
指を ぴったりつけて
そおっと 大切に-
水は つかめません
水は つつむのです
二つの手の中に
そおっと 大切に-

水のこころ も
人のこころ も

高田敏子

http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gifわたしを束ねないで

わたしを束ねないで
あらせいとうの花のように
白い葱のように
束ねないでください わたしは稲穂
秋 大地が胸を焦がす
見渡すかぎりの金色の稲穂

わたしを止めないで
標本箱の昆虫のように
草原からきた絵葉書のように
止めないでください わたしは羽撃き
こやみなく空のひろさをかいくぐっている
目には見えないつばさの音

わたしを注がないで
日常性に薄められた牛乳のように
ぬるい酒のように
注がないでください わたしは海
夜 とほうもなく満ちてくる
苦い潮 ふちのない水

わたしを名付けないで
娘という名 妻という名
重々しい母という名でしつらえた座に
坐りきりにさせないでください わたしは風
りんごの木と
泉のありかを知っている風

わたしを区切らないで
,(コンマ)や.(ピリオド)いくつかの段落
そしておしまいに「さようなら」があったりする手紙のようには
こまめにけりをつけないでください わたしは終りのない文章
川と同じに
はてしなく流れていく 拡がっていく 一行の詩

新川和江


http://uribou.sakura.ne.jp/pinknokeito.gif出逢い

あなたに出逢えてよかった 
しみじみとそうおもう
あなたに出逢えてよかった

ありがとう
ありがとう

すべてのふりかえる道が
この道へ続いていたとおもえる日は
こころが なんどでもくりかえす

ありがとう
ありがとう

関洋子